これはあくまで持論なのだが、人間には様々な賞味期限があると思う。
先日某ミュージシャンが、私の敬愛する某神への気持ちを表すのにも「賞味期限」という言葉を使っていたように、時間とともに価値の質や重さが変化することは、それが良いとか悪いとかではなく、確かに存在すると思うのだ。
そろそろ十の位の数字が変わろうという年代の私が特に感じる「賞味期限」は、転職市場におけるタイムリミットだ。人間、何かをやり始めるのに遅すぎることなんてないという言葉もあるが、実際遅すぎることはなくとも、早い方が有利であることは往々にしてある。
こと未経験でのチャレンジを前提とした転職においては、20代というカードはとても有利だ。なにせ同世代の「経験者」との差が、まださほど開いていないのだから。
ここから頑張ってその差を縮め、追い越すくらいのガッツを見せられれば、あるいは他の経験でそれをアピールできるのなら、その差はそれほど重要なことだとカウントされないことが多い。
しかしこれが、30代、40代となっていくと、きっと話は別なのだ。
ずっとその道を歩んできた同年代とは、10年分、20年分の差が生まれ、未経験者の札がついた自分を雇うことは、企業側にとって大きなデメリットとなっていく。
この未経験者札が、企業にとってさほど大きなデメリットとなる前に、そのデメリットを埋めてなお余るほどのメリットを提示することは、20代カードがあるうちはそれほど難しくない。
むしろ、難しくないうちに様々な企業、職種、業界を経験しておくことで、未経験者札が重たくなってくる年代の自分への保険ともなるだろう。
「技術がないから転職はハードル高い」という声も聞くけれど、それならなおさらだ。そのハードルは、歳とればとるほど高くなっていく。技術がないとは、すなわち「未経験」とイコールだ。
それであれば「人生で一番若い今が、最も強いカード持ってる状態じゃん!」くらいの気持ちで、転職活動を始めてしまえばいい。
ピンポイントで入りたい企業あるなら話は別だ。しかし、少しでも条件良くしたいとか、とにかく現職を辞めたいという動機であれば、こちらの都合に合う企業に対して、企業の都合に合うアプローチをこちらがかければ、若いうちは経験足りなくてもある程度は獲れる。
待っていても転職の機会は来ないし、やってみれば意外と、何かしら事は進むのだ。
そんなわけで、今の仕事が嫌だったり、この先年単位で現職続けることに疑問のある20代の若者たちは、今のうちに一回でいいから転職しておくことをオススメする。
意外とテキトーに生きていいんだな~なんていう精神的なゆとりと、転職そのものの経験値が手に入る。
なお、転職活動を始めることと、転職先が決まるまでの時間は、世の情勢や運にも大きく左右される。コロナによる混乱が始まった2020年の春先は、まさしくそうだった。
人材を抱えることにポジティブでない企業が増えたことに加え、面接のスケジュールが立てにくいことから、体感として、商談の進みが常よりゆるやかである。
そのため、転職活動には多少時間がかかる可能性を想定し、即辞めないといけないほど心身がズタボロになる前に、ゆるゆると活動を始めるのが、個人的には好きだ。
自分がどんな企業に入りたいか、どんな企業には入りたくないか。年収は、残業時間は、働く街は、現場の環境は、人間関係は、服は、どんな状態が理想で、どこまでは妥協できて、優先度が高いものはどれか。
そんなふうに、自分が企業に求めるものを、ひとまず自由に妄想してみる。
本当にそんなところがあるかどうかは、まだ考えなくていい。いきなり月収1億円なんていうのは現実味がないが、自分で「現実味がある」と思える範囲で、楽しくなれる妄想をする。
そうしたら今度は、自分が企業に対して売れるものを考える。労働も一種の商売だ。自分の時間と労働力を、企業にお金で買ってもらうのだ。であれば、自分という労働力をいかに良いものであると宣伝できるかで、企業というお客様にお買い上げいただけるか否かが決まる。
これまでやってきた仕事の中で、楽しかったことは何か。逆に苦しかったことは何か。これからやってみたいこと、興味があることは何か。得意なこと、苦手なこと、人から褒められることは何か。
なんでもいい。仕事ではなく学生時代の話でも、趣味やプライベートでの活動のことでもいい。「活動」と言えるほどのことでなくても、日常の中で感じたり、行なったり、人から評されることを深堀するのでも構わない。
そうやって見つけた自分の「個性」「オリジナリティ」の中で、企業と関連があったり、活かせそうなことはないか。それを、相手の目に魅力的に映るように説明するには、どんな売り文句がいいか。そうやって、自分を「商品」にして売り込む妄想をするのだ。
ちなみに、売り込む妄想をするときは、具体的な企業が決まっていた方がやりやすい。企業によって「欲しい商品」つまり「必要な人材」は違うからだ。自分が入社したい企業が、どんな人材を欲しいと思っているかを考えて、そこに狙い撃ちするように売り文句を考えることで、確度は上がるだろう。
入社したい企業を探すのが面倒だったり、数を打つことで時短したい場合は、転職エージェントを使うのがオススメだ。自分の代わりに、自分に合いそうな仕事を日夜探してきてくれるのだ。しかも無料で。まったく助かるサービスである。
さて、実際に働きながら転職活動をするとなると、まだまだ描きたいことはあるが、長くなりそうなので今回はこれにて。